おなじみ「火星のプリンセス」なのですが、口絵に「？？？」と思われた方もたくさんおられるでしょう。
この本、オリジナルのストーリーを大筋ではなぞっているものの、以下のような不思議な変更の加えられた改作、いや怪作なのです。そして訳者が「野田開作」氏・・・って、これは？？？

• サークに襲われたヘリウム船隊は全滅しない。それどころか脱落したデジャー・ソリスの乗船を見捨てて逃げ帰ってしまう。
• サーク族はデジャー・ソリスを人質にヘリウムから身代金をせしめようとする。（ヘリウムは救出に来ようともしない。）
• サーク族はキャラバンの途中でワフーン族の不意打ちを受けほぼ全滅し、ジョン・カーター、タルス・タルカス、デジャー・ソリスみんな一緒に捕虜になってしまう。
• ワフーン族はゾダンガ人と結託している。
• ワフーンの闘技場（ゾダンガ人も見物している）はウーラとその仲間のキャロットの乱入で大混乱となり、捕虜も逃げ出す（カントス・カンは登場しない。）
• 一人脱出したカーターの所に、ゾダンガの飛行艇を奪ったデジャー・ソリスがやってくる（口絵のシーン）。二人は計略でゾダンガ人をだまし、ヘリウムに帰る。
• カーターの得意技は剣ではなく拳銃の早撃ちである！
• ヘリウムで平和会議が開かれ、カーターとデジャー・ソリスの結婚およびカーターが火星大元帥となることが決定される。

第１巻に無理矢理第３巻の結末をくっつけたようなストーリーですが、まず思うのはこのストーリーだったら「火星の月の下で」は決してヒットしなかっただろうということ。上に書いたことの他にも原作にない怪物やなんやらが目一杯追加されています。いったいこんなことに、原作を愚弄する以外の何の意味があるのか。全く噴飯ものなのです。

というわけですが最後に、ジョン・カーターとデジャー・ソリスの幸せなツーショットを追加してきましょう。ちょっとカーターが馬鹿っぽいですが。