バローズの「火星シリーズ」をなぞった展開であるなら、この第３巻でお話はひとまず完結、主人公とニアムー姫はめでたく結ばれる、となるはずだったのですが、なんと、終・わ・ら・な・い！！お話しはこの表紙絵から推察できるようについに舞台を暗黒の”地上”に移しての展開となるのですが、それは一人称で語られる部分であって、三人称で記述される分では逆に空中浮揚都市でのストーリーとなります。そしてそれらは最後の瞬間になってやっと束の間交差するのです。この終わらない話は第四巻以降は中編連作の形式になってしまいます。火星でなく金星であった、というところです。
このあとどうすんだろ。なにしろ国内版はこの第三巻で終わり。そういう状態で構わず終わってしまうあたり、いかに日本で人気がなかったかということでしょうか。もっとも、なんとなくうなずける気がしてしまうところが残念（苦笑）。なにしろ一人称と三人称の分裂したストーリー展開、かすかに匂う（現代小説にあるまじき）有色人種差別、など、あんまり芳しくない特徴がありますのでね。
とはいえここまで読んでしまうと、なんとなくナサケナイ主人公や性格の際だってこないヒロインなどがこのあとどうなるか知りたいのも人情というもの。勝手に続編を訳しちゃいましょうかねー。（誰も読まんだろうけど。）
翻訳と言えば本シリーズの関口幸男訳にはいささか異議あり。一例を挙げれば「これっぽっち」。多用されていますが、これは「これ」に相当する身振り（指先をくっつきそうに近づけるとか）を伴って初めて意味のある表現であるはず。したがって台詞で使われるのなら良いですが、地の文には使ってはいけないものではないでしょうか。

カバー絵ですが、ハヤカワ版の深井国は最近見かけませんがうまいし、大好きな画家です。原書（７４年刊行）の表紙はついにロイ・クレンケルの登場

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