●対訳「金星シリーズ」名文句・決め台詞
●第１巻「金星の海賊」より
【カースン、ドゥーアーレーにいきなり求愛す、のシーン】
『娘がわたしから逃げるより早く、わたしは彼女の前に立った。彼女の目は動顛し恐怖にかられていた。わたしをこわがっているなと思った。
「こわがることはありません」わたしはいった。「危害を加えに来たのではありません。ただ、お話しに来たのです」
彼女は気位高く胸をそらせた。「おまえを恐れてはいません」彼女はいった。「この場を見られたら、おまえは殺されるでしょう。すぐさま部屋へ帰って、二度とこんなむこうみずな行動をしてはなりませぬ」
（中略）
わたしは彼女の腕をつかんだ。「待ってください」と頼んだ。
彼女は雌虎のように、さっと向きなおると、わたしの顔を平手でぴしゃりと打った。次にガードルの鞘から短剣をひき抜いた。「無礼な」と叫んだ。「この身に手をかけるとは！おまえを殺さねばならぬ」
「なぜ殺さないのですか？」
「おまえなど大きらいです」その口調は、まるで本気のように聞こえた。
「わたしはあなたが好きです」わたしは答えた。そして、そのことばに嘘いつわりのないことを知っていた。』
（「金星の海賊」創元版Ｐ．１０６〜１０７。厚木淳訳）
『娘が逃げるいとまもなく、わたしは彼女の前に立ちふさがった。彼女の目に驚愕と恐怖が浮かんだ。きっとわたしを恐れているのだろうと思った。
「こわがらないでください」と、わたしはいった。「危害を加えるつもりはありません、ただお話がしたいだけです」
彼女は毅然として開きなおった。「こわくなどありません。わたくしは−」彼女はちょっといいよどんでから、あらためていいなおした。「もしここにいるのを人に見られたら、あなたは殺されます。今すぐ自分の部屋へ帰りなさい。もう二度とこのような無分別をしてはなりません」
（中略）
わたしは彼女の腕をとらえて、「待ってください」と懇願した。
彼女は雌虎のようにきっと向きなおると、わたしの頬に平手打ちをくれ、腰帯の鞘からさっと短剣を抜いた。「無礼者！」と叫んだ。「わたくしの体に手をかけるとは！生かしてはおきませぬぞ！」
「ではなぜ殺さないのです？」
「あなたなど大嫌いです」その言葉は本心としか受けとれなかった。
「しかし、わたしはあなたを愛しています」これまたわたしの本心だった。』
（「金星の大海賊」角川版Ｐ．９６〜９７。永井淳訳）
Before the girl could escape me, I stood
before her. There were consternation and
horror in her eyes. I thought that she was
afraid of me.
"Do not be afraid," I said; "I
have not come to harm you, only to speak
to you."
She draw herself up proudly. "I am not
afraid of you," she said; "I -,"
she hesitated and then started over. "If
you are seen here you will be destroyed.
Go back to your quarters at once and never
dare such a rash act again."
（中略）
I saized her arm. "Wait," I begged.
She wheeled on me like a tigress and slapped
ny face, and then she whipped the dagger
from the scabbard at her girdle. "How
dared you," she cried, "lay a hand
upon me! I should kill you."
"Why don't you?" I asked.
"I loathe you," she said, and it
sounded as though she meant it.
"I love you," I replied, and I
knew that I spoke the truth.
【Ｄｕａｒｅはドゥーアーレーと発音する】
『「おや、ジョーダデス」キャムロットが答えた。「ホーナンがここに来るとは、どんな悪運だったんだ？」
「悪運なんて言葉で、説明できたしろものじゃないよ」ホーナンが答えた。「破局というほうがましだ。鳥人（クランガン）は、男ばかりか、女もさがしている。やつらは、ドゥーアーレー（原注 Ｄｕａｒｅはドゥーアーレーと発音する）を見つけて、追跡した。ぼくは彼女を守ろうとして、捕らえられたのだ」』
（「金星の海賊」創元版Ｐ．１５１。厚木淳訳）
『「ラ・ジョーダデス」と、カムロットが答えた。「ホーナン、きみはどんな不運に見舞われてここにいるんだ？」
「不運なんていうもんじゃない」と、ホーナン。「まさに破局だ。鳥人どもは男だけでなく女も捜していた。やつらはドゥーアーレーを発見して彼女を追跡したんだ。わたしが彼女を護ろうとしたので、やつらはわたしをつかまえた」』
（「金星の大海賊」角川版Ｐ．１３８。永井淳訳）
"Ra jodades," replied Kamlot; "what
will fortune brings Honan here?"
"'Ill fortune' does not describe it,"
replied Honan; "catastrophe would be
a better word. The Klangan were seeking women
as well as men; they saw Duare" (pronounced
Doo-ah-ree) "and pursued her; as I sought
to protect her they captured me."
【２７才のカースン、好きになったら一直線。ソーファル号の船上でドゥーアーレーと劇的な再会】
『わたしは少し近づいて、彼女の目をまっすぐに見た。「あなたは、けっして話しません」とわたしは小声でいった。
「なぜです？なぜ、そう考えるのです？」彼女はたずねた。が、その声は少し震えていた。
「わたしに愛してほしいからです」わたしは、ひらき直った。
彼女は怒ってじだんだを踏んだ。「あなたは、分別も慎みも作法もないひとです！」彼女は叫んだ。「すぐに立ち去るがよい。二度と目通りはかなわぬ」
彼女の胸は波打ち、美しい目はきらきら光っていた。』
（「金星の海賊」創元版Ｐ．２０３〜２０４。厚木淳訳）
『わたしはまた少し彼女に近づいて、まっすぐに目をのぞきこんだ。「あなたはだれにも話しませんよ」と、わたしは囁いた。
「なぜです？どんな根拠があってそう思うのです？」と、彼女はたずねたが、その声はかすかにふるえていた。
「あなたはわたしに愛されることを望んでいるからです」と、わたしは彼女に挑戦した。
彼女は怒って足を踏み鳴らした。「あなたは分別も自制も礼儀もわきまえない人です！すぐにこの部屋から出ていってください。もう二度と顔を見たくありません」
彼女は興奮で胸をはずませ、美しい目をきらきらさせていた。』
（「金星の大海賊」角川版Ｐ．１８８。永井淳訳）
I came a little closer to her and looked
straight into her eyes. "You would never
tell," I whispered.
"Why not? What makes you think that?"
she demanded, but her voice quavered a little.
"Because you want me to love you,"
I challenged her.
She stamped her foot angrily. "You are
beyond reason or forbearance or decency!"
she exclaimed. "Leave my cabin at once;
I do not wish ever to see you again."
Her bosom was heaving, her beautiful eyes
were flashing.
【いよいよクライマックス。ドゥーアーレーの告白ははたして本心なのか】
『「おそばから離さないで、カースン！わたくしを遠くへやらないで！あなたを愛しています！」
だが、遅すぎた。かりに呼びもどすことができたとしても、わたしはそうしなかっただろう。武装した敵が攻撃してきたからだ。
かくて、わたしはヌーボルの地でとらわれの身となった。その冒険談には、この物語は関与しない。しかしわたしは、愛する女性がわたしを愛していることを知って、とらわれの身となったのだ。わたしは幸福であった。』
（「金星の海賊」創元版Ｐ．２６５〜２６６。厚木淳訳）
『「おそばにおいてください、カースン！わたくしをいかせないで！あなたを愛しています！」
だが、時すでに遅かった。かりに呼び戻すことができたとしても、わたしはそうしなかっただろう。ちょうどそのとき、敵がわたしのほうへ殺到してきたからである。
かくてわたしはヌーボルの地で囚われの身となった。その冒険談は、この物語とはかかわりがない。しかし、わたしは、おかげで愛する女性が自分を愛していることを知った。わたしは幸福だった。』
（「金星の大海賊」角川版Ｐ．２４８。永井淳訳）
"Do not send me away from you, Carson!
Do not send me away! I love you!"
But it was too late; I would not have called
her back could I have done so, for the armed
men were upon me.
Thus I went into captivity in the land of
Noobol, an adventure that is no part of this
story; but I went with the knowledge that
the woman I loved, loved me, and I was happy.
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