対訳「火星シリーズ」名文句・決め台詞

第８巻「火星の透明人間」より

【冒頭、単身出発するカーターとデジャー・ソリスの別れのシーン】

『その夜はデジャー・ソリスと水入らずで過ごし、八火星時［ゾード］二五火星分［ザット］（地球時間の真夜中）に、わたしは紋章のない質素な装具に着替え、いざ冒険にのりだす準備をした。
「お行きにならないでください、あなた。予感が　−　そう、わたくしたちが二人とも後悔することになるような予感がいたします」
「暗殺ギルドには思い知らせてやらなければならない」わたしは答えた。「さもなければ、バルスームでは人々が安らかに日を送ることができない。彼らはみずからの行動によって、決定的な挑戦を宣告したのだ。わたしは手をこまねいて見すごすわけにはいかないのだ」
「お気持ちはわかります。あなたは剣によって高い位を勝ち得られました。剣の力によってそれを維持なさらねばならないのでしょう。でも、今度はべつな方法があればよろしいのに」
わたしはソリスの手をとり、彼女に接吻して、心配はいらない−長い別れではないのだから、といいきかせると、屋上の格納庫に向かった。』
（「火星の透明人間」創元版Ｐ．２０〜２１。厚木淳訳。［］内はルビ）

That evening I spent alone with Dejah Thoris; and about twenty-five xats past the eighth zode, or at midnight earth time, I changed to a plain leather harness without insignia, and prepared to leave upon my adventure.
"I wish you were not going, my prince; I have a premonition that - well - that we are both going to regret it."
"The assassins must be taught a lesson," I replied, "or no one's life will be safe upon Barsoom. By their acts, they have issued a definite challenge; and that I cannot permit to go unnoticed."
"I suppose not," she replied. "You won your high position here with your sword; and by your sword I suppose you must maintain it, but I wish it were otherwise."
I took her in my arms and kissed her and told her not to worry - that I would not be gone long. Then I went to the hanger on the roof.

【ザンダをともなってのゾダンガ脱出！このあと物語の舞台はサリアへ！】

『静かな夜空に出ると、ザンダはわたしの首にしがみついた。
「ああ、ヴァンドール！ヴァンドール。あの恐ろしい人の手から助けてくださったのね。わたくしは自由よ！また自由になったのよ！」彼女はヒステリックに叫んだ。「ヴァンドール、わたくしはあなたのものよ。永久にあなたの奴隷になります。なんでも好きなようにしてちょうだい」
彼女は取り乱して、ヒステリックになっている。
「ザンダ、きみは興奮しているんだ」わたしはなだめるようにいった。「きみはわたしに借りなんかない。きみは自由の身だ。わたしの奴隷になる必要もなければ、どんな人間の奴隷になる必要もないのだ」
「あなたの奴隷になりたいのよ、ヴァンドール」彼女はいった。それから、ひどく低い声でいった。「愛しています」』
（「火星の透明人間」創元版Ｐ．１９１。厚木淳訳）

As we passed out into the still night, Zanda threw her arms about my neck. "Oh, Vandor, Vandor!" she cried, "you have saved me from the clutches of that horrible creature. I am free! I am free again!" she cried, hysterically. "Oh, Vandor, I am yours; I shall be your slave forever. Do with me whatever you will."
I could see that she was distraught and hysterical.
"You are excited, Zanda," I said, soothingly. "You owe me nothing. You are a free woman. You do not have to be my slave or the slave of any other."
"I want to be your slave, Vandor," she said, and then in a very low voice, "I love you."

【青い髪、けだるい瞳の美女オザラ】

『いっぽう、わたしは、彼らには唖で盲ということになっているのを思い出して、その隠された目でわたしの心のうちを読もうとする美貌の皇后から視線をそらせようとしていた。
「さがってよい、アラー」皇后はしばらくするといった。
奴隷女は深々と一礼して部屋から退出した。
彼女が去ってからしばらく沈黙がつづいていたが、わたしはずっと、オザラの視線を身に感じていた。
やがて、彼女は澄んだ声で笑い出した。
「名前はなんというのです？」彼女はたずねた。』
（「火星の透明人間」創元版Ｐ．２６７〜２６８。厚木淳訳）

while I, recalling that I was supposed to be deaf and blind to these people, sought to focus my gaze beyond the beautiful empress whose vailed eyes seemed to read my very soul.
"You may retire, Ulah," she said presently.
The slave girl bowed low and backed from the room.
For several moments after she departed, no sound broke the silence of the room; but always I felt the eyes of Ozara upon me.
Presently she laughed, a silvery musical laugh. "What is your name?" she demanded.

• ジョン・カーターと３人の美女のカラミの場面を集めました。
• 第１場。なんたって「水入らず」ですぞ、「水入らず」。「水」入りまくりの場面でのラブシーンはよく出てくるけど、そうじゃないとき二人は何を・・・。まさかジェッタンしてたんじゃないよね。
• このシーン、「ソリスの手をとり」というのが気になるところ。単に「ソリス」という呼び方をするのか？と思って原文を見るとなんとただの「her」じゃありませんか。しかも「手をとり」じゃなくて「腕に抱き」が正解だと思う。ここ、合本版ではどうなるでしょうか。
• 第２場。たぶんバランタインブックス版の表紙の場面（乗っている飛行艇が違いますが）。
• 第３場。ひとり皇后オザラに召し出されたジョン・カーター。オザラはソファに寝そべっています。このシーンを描いたフラゼッタの絵がありますね。

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