対訳「火星シリーズ」名文句・決め台詞

第２巻「火星の女神イサス」より

【ファイドール自己紹介のシーン】

『わたくしは、永遠の生命の王女。イサスの兄弟、バルスームの生と死の支配者、サーンズの教皇、ホーリー・サーンズのホーリー・ヘッカドール、マタイ・シャンの娘ファイドールよ』（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．１１８。小西宏訳。太字部分には傍点）

『わたくしは＜永遠の生命の王女＞。イサスの兄弟、バルスームの＜生と死の支配者＞、サーンの教皇、ホーリー・サーンのホーリー・ヘッカドール、マタイ・シャンの娘ファイドールよ』（「火星の女神イサス」創元合本版Ｐ．３６８。厚木淳訳）

『わたしは、永遠の生命の王女イサスの兄弟、バルスームの生と死の支配者、サーンの教皇、ホーリー・サーンのホーリー・ヘッカドール、マタイ・シャンの娘ファイドールです』（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．１１４。小笠原豊樹訳）

"I am Phaidor, daughter of Matai Shang, Holy Hekkador of Holy Therns, Father of Therns, Master of Life and Death upon Barsoom, Brother of Issus, Princess of Life Eternal."

【ファイドールの愛の告白】

『ファイドールはわたしの腕をつかんだ。
「助けて！」彼女は小声で叫んだ。「助けてちょうだい。そうすればどんな願いでもかなえてあげるわ−ホーリー・サーンの力でできることならなんでも、あなたにしてあげる、ファイドールは−」彼女はちょっといいよどんだが、それから、小声でいった。「ファイドールは、もうあなたのものよ」』
（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．１４８。小西宏訳）

『ファイドールは私の腕をつかんだ。
「助けて！」と彼女は小声で言った。「わたしを助けて。そうすれば、何でもあなたの望みどおりよ。ホーリー・サーンにできることなら何でも望みをかなえてあげるわ。ファイドールは−」彼女はここでちょっと口ごもったが、すぐに声をひそめて言った。「ファイドールはもう、あなたのものよ」』
（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．１４２。小笠原豊樹訳）

Phaidor grasped my arm.
"Save me!" she whispered. "Save me and your every wish shall be granted. Anything within the power of the Holy Therns to give will be yours. Phaidor -" she stumbled a little here, and then in a very low voice, "Phaidor already is yours."

【そしてジョン・カーターに愛を拒絶されたファイドールの怒りの言葉】

『「犬畜生」彼女はののしった。「犬畜生の冒涜者め！そんなことでマタイ・シャンの娘、ファイドールが泣きつくとでも思うのか？ファイドールは命ずるのです。俗世界でおまえが選んだ卑しい女に対して、おまえがけちくさい俗界の情を寄せたとて、それがファイドールにとってなんだというのです？
「ファイドールはその愛でおまえに栄光を与えた。それなのに、おまえはこばんだのだ。言語に絶するほどの残虐な死を一万回加えても、おまえがわたくしに与えたこの屈辱は贖いきれない。デジャー・ソリスとかいう女には、その中でも一番ひどい死を与えてやる。おまえがその女の運命を定めてしまったのだ。
「それからおまえもだ！おまえが辱めようとした女神に仕える一番卑しい奴隷にしてやる。おまえがわたくしの足下にはいつくばって死なせてくれと頼むまで拷問と恥辱を浴びせてやろう。わたくしは寛大な情深い広い心で、やがてはおまえの願いをききとどけ、大白猿がおまえを八つ裂きにするのを、黄金の崖の高いバルコニーの上から見物することにしよう」』
（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．１５０。小西宏訳）

『「畜生！」彼女はののしった。「罰当たりの畜生め！マタイ・シャンの娘ファイドールが哀願しているとでも思っているの。ファイドールは命令するのよ。おまえが外の世界で選んだ下等な女にくだらない外界の情熱を感じたからって、それがファイドールにとって何だというの。
「ファイドールはその愛によっておまえに栄光を与えたのよ。それを、おまえははねつけた。おまえがわたしに与えた侮辱は、残虐きわまるやり方で一万回殺されたって償いきれやしない。そのデジャー・ソリスとかいう女は、きっと殺してやる。一番ひどい殺し方でね。その女の運命はおまえがきめてしまったのよ。
「そして、おまえもよ！一番卑しい奴隷にしてやるわ。おまえがはずかしめようとした女神に仕えるのよ。わたしの足もとにはいつくばって、もう死なせてくださいと哀願するまで拷問と屈辱を加えてやる。
「わたしは慈悲深い寛大さを見せて、最後にはその願いをききとどけてやるわ。そして、黄金の断崖の高いバルコニーの上から、大白ザルがおまえをずたずたに引き裂くのを見物してやるから」』
（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．１４４。小笠原豊樹訳）

"Dog," she hissed. "Dog of a blasphemer! Think you that Phaidor, daughter of Matai Shang, supplicates? She commamds. What to her is your puny outer world passion for the vile creature you chose in your other life?
"Phaidor has glorified you with her love, and you have spurned her. Ten thousand unthinkably atrocious deaths could not atone for the affront that you have put upon me. The thing that you call Dejah Thoris shall die the most horrible of them all. You have sealed the warrant for her doom.
"And you! You shall be the meanest slave in the service of the goddess you have attempted to humiliate. Tortures and ignominies shall be heaped upon you until you grovel at my feet asking the boon of death.
"In my gracious generosity I shall at length grant your prayer, and from the high balcony of the Golden Cliffs I shall watch the great white apes tear you asunder."

【オメアン海から無事脱出した飛行艇のデッキで、ついに名乗りあうジョン・カーターとカーソリス】

『「長い歳月のあいだ、おまえのお母さまのまばゆいばかりの面影がわたしの眼前に現れなかったときは、一瞬とてないのだよ。お母さまのことを聞かせておくれ」
「昔から母を知っているひとたちは、ますます美しくなるということがありえないとすれば−母はすこしも変わらないといっています。ただ、ぼくに見られていると思わないとき、母の顔はとても悲しそうに、ああ、とても寂しそうになるのです。母はいつでも、ぼくの父であるあなたのことを考えています。そしてヘリウムじゅうが、母とともに、そして母のために悲しんでいます。ヘリウムの国民は母を愛しています。彼らはあなたも好きだったのです。だからバルスームの救世主として、あなたの思い出を非常に大事にしています。」
（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．２２８〜２２９。小西宏訳）

『「そうだよ、長い年月のあいだ、きみの母上の美しい面影が私の目に浮かばないことは片時もなかったのだ。さあ、あのひとのことを話してくれ」
「昔から母を知っている人びとは、母はちっとも変わらない−ますます美しくなるくらいだと言っています。しかし、ぼくに見られていないと思っているとき、母の顔はとても悲しそうになって、深い物思いに沈んでしまうのです。母はいつも父のことを、あなたのことを考えています。そしてヘリウムじゅうの人びとが、母とともに悲しみ、母のために嘆いています。皇帝の臣下たちは母を愛しているのです。また彼らはあなたのことも愛していたのです。バルスームの救い主として、あなたの思い出は非常に大切にされています。」
（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．２２５。小笠原豊樹訳）

"For long years, my son, I can scare recall a moment that the radiant vision of your mother's face has not been ever before me. Tell me of her."
"Those who have known her longest say that she has not changed, unless it be to grow more beautiful - were that possible. Only, when she thinks I am not about to see her, her face grows very sad, and, oh, so wistful. She thinks ever of you, my father, and all Helium mourns with her and for her. Her grandfather's people love her. They loved you also, and fairly worship your memory as the saviour of Barsoom."

（中略）

「で、お母さまはおまえをなんと呼んでいるのだね？」
「ヘリウムのひとたちは、ぼくに父の名前をつけるようにと頼みました。しかし母は断わりました。あなたと母はふたりして、ぼくにある名前を選んでおいたのだし、あなたの希望は、ほかのなににもまして尊重されなければならないというわけです。だから母が命名したのは、あなたが望んでいた名前−母の名とあなたの名をいっしょにしたカーソリスです」』
（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．２２９。小西宏訳）

「それで、母上はきみに何という名をつけたのかね」と私はきいた。
「ヘリウムの人びとは、ぼくに父の名をつけてもらいたいと頼みましたが、母は承知しませんでした。あなたと二人ですでに選んでおいた名前があったし、あなたの希望は何よりも大切にしなければならなかったからです。ですから、母がぼくにつけた名前は、あなたが望んでおられたとおり、母の名前とあなたの名前を組み合わせたカーソリスです」』
（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．２２５〜２２６。小笠原豊樹訳）

"And by what name has your mother called you, my boy?" I asked.
"The people of Helium asked that I be named with my father's name, but my mother said no, that you and she had chosen a name for me together, and that your wish must be honoured before all others, so the name that she called me is the one that you desired, a combination of hers and yours - Carthoris."

【ワフーンの大群に追撃されるジョン・カーター一行。スビアを乗せたカーターのソートは遅れ、いままさに追いつかれようとしている・・・】

『わたしの馬（ソート）は、ますます遅くなっていたので、スビアとわたしがしんがりだった。突然、娘の暖かい唇がわたしの肩に触れるのを感じた。
「あなたのために、ああ、王子さま」彼女はつぶやくようにいった。それから、わたしの腰のまわりから手が離れ、いなくなった。
ふりむくと、残酷な悪魔どもが追ってくる通り道に、滑り落ちていく彼女の姿が見えた。馬（ソート）の荷を軽くして、わたしを無事に丘につかせようとしたのだ。かわいそうな娘！ジョン・カーターが、そんな厚意を甘んじて受けるとでも思ったら、大まちがいだ！』
（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．２５６〜２５７。小西宏訳）

『私の火星馬（ソート）の走り方はますます遅くなっていたので、サビアと私は一番うしろにいた。とつぜん、娘のあたたかい唇が私の肩に押しつけられるのを感じた。「ああ、王子さま、あなたのためなら」と彼女はつぶやいた。つづいて、私の腰のまわりの手がはなれ、娘はいなくなった。
振り返ってみると、残酷な悪魔どもが追い迫ってくるその通り道に、サビアはわざと滑り落ちていた。火星馬（ソート）の負担を軽くして、私を無事に丘にたどりつかせようと考えたのだ。かわいそうな娘！だが、ジョン・カーターを見そこなってはいけない。』
（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．２５３。小笠原豊樹訳）

Thuvia and I were in the rear, for our beast was lagging more and more. Suddenly I felt the girl's warm lips press a kiss upon my shoulder. "For thy sake, O my Prince," she murmured. Then her arms slipped from about my waist and she was gone.
I turned and saw that she had deliberately slipped to the ground in the very path of the cruel demons who pursued us, thinking that by lightening the burden of my mount it might thus be enabled to bear me to the safety of the hills. Poor child! She should have known John Carter better than that.

【太陽宮にのみこまれようとするデジャー・ソリス、スビア、そしてファイドール。衝撃の大団円】

『突然彼女のうしろから、憎悪にゆがんだファイドールの美しい顔が現われた。わたしと目があうと、彼女は口を開いた。
「ジョン・カーター、マタイ・シャンの娘ファイドールの愛をあれほど軽々しく退けて、それですむと思ったら大まちがいよ。それにデジャー・ソリスを二度とその手に抱こうなんて、夢にも思わないでね。待ちどおしい一年が終わったとき、あなたにさしのべられる手は、ヘリウムの王女のそれではなく、ファイドールの手であることを承知してちょうだい。さあこうして、殺してやるのよ！」』
（「火星の女神イサス」創元版Ｐ．３６１。小西宏訳）

『とつぜん彼女のうしろに、悪意と憎悪にゆがんだファイドールの美しい顔が見えた。私と視線が合うと、彼女はしゃべりだした。
「ジョン・カーター、マタイ・シャンの娘ファイドールの愛をあんなにあっさりとはねつけて、無事にすむと思ったらとんでもないことよ。それに、デジャー・ソリスをもう一度、自分の腕に抱こうなんて、絶対に思わないほうがいいわ。これからの長い、長い一年間、待っているがいいわ。でも、その待ちどおしい一年が過ぎたとき、あなたにさしのべられる手はヘリウムの王女の手ではなくて、このファイドールの手だということをよく覚えておきなさい。ごらん、この女は死ぬのよ！」』
（「火星の女神イサス」角川版Ｐ．３５４。小笠原豊樹訳）

Suddenly beyond her I saw the beautiful face of Phaidor contorted into an expression of malign hatred. As my eyes met hers she spoke.
"Think not John Carter, that you may so lightly cast aside the love of Phaidor, daughter of Matai Shang. Nor ever hope to hold thy Dejah Thoris in thy arms again. Wait you the long, long year; but know that when the waiting is over it shall be Phaidor's arms whitch shall welcome you - not those of the Princess of Helium. Behold, she dies!"

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